基本書というと、大体その年代ごとにメジャーな基本書というのがあるものです。
私が勉強を始めた当時(1999年から2000年)は各科目ごとにあげると大体下記のような基本書が最もメジャーでした。
(なお、当時は両訴必修の6科目なので、行政法はありません)
憲法 ― 芦部信喜『憲法』
民法 ― 内田貴『民法1』『民法2』『民法3』(当時は親族法・相続法は未出版)
刑法 ― 前田雅英『刑法総論講義』『刑法各論講義』
商法 ― 弥永真生『リーガルマインド会社法』「リーガルマインド手形・小切手法』
民訴 ― 上田徹一郎『民事訴訟法』
刑訴 ― 田宮裕『刑事訴訟法』
今の時代のメジャーな基本書とは少々違うかもしれませんが、当時は大体これらの基本書が一番人気だったと思います。
ただ、メジャーな基本書が必ずしも受験勉強の初期に適するとは限りません。
私も、他の多くの学生と同じく、大学1年生か2年生のうちに意気込んでこれらの基本書を買い揃えてみましたが、実際にはなかなか読めず、部屋の隅に文字通り積んでしまっておりました。
いずれも司法試験受験生に人気というだけあって情報量が大変に多いのです。
ですので、最初の前説の部分を読んだだけで何となく沢山勉強をした気になってしまって、本編を読もうと思いつつも、本編を読む気力が湧かず、長期間積んだままになってしまうという状況になってしまっていたのです。
受験生にとって基本書の良し悪しを決める最大の要素は『情報量』です。
何だかんだと言っても知っている論点が出れば有利だし、他の受験生が知っている論点を知らなければ不利になるので、なるべく多くの論点を網羅していて、かつ論述のヒントを与えてくれる基本書が非常に人気があったわけです。
しかし、初学者が情報量の多い基本書を無理に読もうとしてしまうと、かえって情報量が多すぎてオーバーヒートしてしまう可能性が高いです。
上記のようなメジャーな基本書は、受験勉強の中級以上の段階で読むこととして、まずは読破できる程度に読みやすい基本書を読むことが大事です。これは分量が薄いと言うことのみを指すわけではなく、基本的な論点をわかりやすく論述しているような易しいものであれば、多少分量が多くても構いません。
私が各科目について最初に読んだ基本書は以下の通りです。
憲法 ― 渋谷秀樹・赤坂正浩『憲法1』『憲法2』(有斐閣アルマ)
民法 ― 我妻栄・有泉亨・川井健『民法1』『民法2』『民法3』(いわゆるダットサン民法)
刑法 ― 大越義久『刑法総論』『刑法各論』(有斐閣Sシリーズ)
商法 ― 落合誠一・近藤光男・神田秀樹『商法2 会社』(有斐閣Sシリーズ)
民訴 ― 上原敏夫・山本和彦・池田辰夫『民事訴訟法』(有斐閣Sシリーズ)
刑訴 ― 上口裕・安冨潔・後藤昭・渡辺修『刑事訴訟法』(有斐閣Sシリーズ)
分かる人(同年代の受験生の方など)には分かると思いますが、いずれもハードカバーの分厚い本ではなく、文庫本を一回り大きくしたサイズの本ばかりです。
手軽に持ち運んで読めますので、少し暇な時間があればすぐ読むことが出来ます。
一つの法分野がコンパクトにまとまっているので、「いくら長大な法律と言っても、大体これを押さえておけば7、8割方は大丈夫なはず」という自信にもなります。
勿論、自分の読みやすい本であれば何でも構いませんが、とりあえず、まずは読みきれる本を買って、きちんと読みきることが大事です。