今の時代になっても「いじめに対しては勇気を出して自分の力で対抗できるようにならなければ駄目だ」という意見を聞くことがあります。
特に男子児童・男子生徒に対してよく言われるように思います。
昔ながらのマッチョイズムで、男は強くあれという大前提、それに基づいた意見であり、一見すると良いようにも聞こえます。
しかし、このようなスローガン的な見解をいくら押し進めてもいじめの問題が解決することはないと思います。
要するに「立ち向かえ」「やり返せ」というのは、いじめている側の人間が殴ってきたら殴り返せ、ということでしょう。
しかし、暴力は良くないなどという以前に、殴り返すくらいの「力」(腕力というだけではなくてクラスルーム内での「権力」という趣旨を含みます)のある者であれば、そもそもいじめのターゲットにならないでしょう。
大体は、教室における暗黙のヒエラルキー(現在はスクールカーストとも言われます)の最下層か、とりあえずクラスのボス格の仲間ではあるもののその中では最も力が弱い者が狙われることが多いと思います。
勇気を出したくても出せない、体を鍛えて殴り返したくてもそれができない。
そういう者を狙っていじめは行われます。
こういうターゲット選定に関する子ども達のセンスは、大人では計り知れない、恐ろしいものがあります。
むしろ大人になると自分の仕事や家庭のことで頭が一杯になって、誰がどういった性質の人間かということにはそこまで深い関心を払わなくなりますし、肩書き同士の付き合いがほとんどですので、むき出しの、素の人間性同士で接することというのはほぼ無くなります。
ただ子ども達はクラスルームにおいて、性格・容姿・能力全ての部面において全人格的に相互に観察しつつ日々をおくります。それだけに、そういった感覚というのは子どものほうがよくはたらいてしまうのかもしれません。
ともあれ、いじめというのは基本的には「抵抗する可能性がない・低い者を狙った継続的かつ物理的・精神的な暴力」です。
抵抗できないものを狙っていじめが発生するのに、「抵抗しろ」というのは無理な話です。
むしろ大人に助けを求めることを「虎の威をかる狐」のような行為であるとして卑怯な行為であるかのように言う向きもあります。
しかし、大人であっても、例えば暴力団に脅迫されたら警察に言うでしょう。また職場でパワーハラスメントに遭えば弁護士に相談するでしょう。
大人ですら国家権力や専門職に助けを求めるのに、子どもが助けを求めてはいけない理由は全くないはずです。
大事なことは、上手に、的確に助けを求めることは恥ずかしいことではないという意識を浸透させることだと思います。
前田誓也法律事務所
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