憲法の基本書【2025】
芦部信喜先生の『憲法』は有効か
憲法に関しては、よく「芦部先生の本を読みなさい」とアドバイスされることがあります。
たしかに芦部信喜先生の『憲法』(第8版・岩波書店)は名著です。
しかし、芦部信喜先生の『憲法』が憲法の基本書のスタンダードとなったのは約30年前のことです。
また、当時から、書かれている内容をそのまま司法試験の論証に使えるほどに練りに練られた名著ではありますが、逆に、記述が練られすぎていて寄り道的な記述や冗長な記述がなく、実は初学者向けにはあまり向かない本であると思います。
この「書かれている内容をそのまま司法試験の論証に使える」というのは、一見するとお得ですが、初学者向けではないという問題があります。
論証に使えるということは、私達が普段使っている日常用語やかみ砕いた易しい言葉ではなく、格式高い表現がされているということです。馴染みがないだけに、理解が表層的になってしまってかえって丸暗記主義に陥る可能性があるように思います。
たしかに芦部信喜先生の『憲法』(第8版・岩波書店)は名著です。
しかし、芦部信喜先生の『憲法』が憲法の基本書のスタンダードとなったのは約30年前のことです。
また、当時から、書かれている内容をそのまま司法試験の論証に使えるほどに練りに練られた名著ではありますが、逆に、記述が練られすぎていて寄り道的な記述や冗長な記述がなく、実は初学者向けにはあまり向かない本であると思います。
この「書かれている内容をそのまま司法試験の論証に使える」というのは、一見するとお得ですが、初学者向けではないという問題があります。
論証に使えるということは、私達が普段使っている日常用語やかみ砕いた易しい言葉ではなく、格式高い表現がされているということです。馴染みがないだけに、理解が表層的になってしまってかえって丸暗記主義に陥る可能性があるように思います。
冗長さというのは基本的には避けられるべき要素ですが、初学者の場合、多少は、授業の「実況中継」ふうに寄り道であったり繰り返しがなければ、逆に考えるきっかけをつかめないことがあります。
初学者向けの基本書(学習書)
いま人気があるのは三段階審査説の『憲法Ⅰ』『憲法Ⅱ』(渡辺康行・宍戸常寿・松本和彦・工藤達朗)かと思いますが、全体としては分量が極めて多いので、元々、憲法という科目がそこまでの知識量を必要としない(学習で大事なのは考え方の部分)ことを考えると、最初に読む本としてはあまり向かないのではないかと思います。
私の受験時代は有斐閣アルマ『憲法1』『憲法2』(渋谷秀樹・赤坂正浩)と、有斐閣『憲法Ⅰ』『憲法Ⅱ』(野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利)が主な学習書でした。ただ、いずれも2000年前後にベースが完成している本であり、特に後者については最近は改版されていません。
本秀紀 編『憲法講義』(第3版)(2022年・日本評論社)が最近読んだ中では最も良いと思いました。
主に名古屋大学の憲法学の系譜に連なる学者が執筆した本かと思いますが、判例の紹介と学者としての理論・批判が織り込まれており、全体の分量も憲法教科書としてはコンパクトにまとめられていると思います。
昨年出版された木村草太教授の『憲法』(2024年・東京大学出版会)も、今後、芦部信喜『憲法』に代わる、新たなスタンダードになりうる一冊ではないかと思います。
「学習書としては」と記載したのは、ブログや新書など、市民や学生に発信を行っておられる著者ならではというところですが、なるべく日常的かつ平易な言葉で、問題意識とそれに対する考え方が明快に記述されています。
つまり、この本は、司法試験受験生が論証パターンにそのまま転用できるというものではありません。
しかし、司法試験を目指すにせよ、学生として学ぶにせよ、最も重要なのは全体的に基礎知識を把握しつつ、重要な問題について、何が問題であって、それを、どのような論理で解決するのかを考えることです。
「学習書としては」と記載したのは、ブログや新書など、市民や学生に発信を行っておられる著者ならではというところですが、なるべく日常的かつ平易な言葉で、問題意識とそれに対する考え方が明快に記述されています。
つまり、この本は、司法試験受験生が論証パターンにそのまま転用できるというものではありません。
しかし、司法試験を目指すにせよ、学生として学ぶにせよ、最も重要なのは全体的に基礎知識を把握しつつ、重要な問題について、何が問題であって、それを、どのような論理で解決するのかを考えることです。
暗記を否定するわけではないのですが、基礎知識の暗記と、問題解決思考は交互に繰り返す必要があります。
司法試験は基礎知識だけでなくそれを応用する思考力を問われる試験ですので、早い段階から考える訓練をしておくことは必要です。
その点では、憲法についても、定評ある名著よりも、まずは学習書的な本で学ぶのが良いと思われます。
また、最近の司法試験の憲法は上記の、『憲法Ⅰ』(渡辺康行・宍戸常寿・松本和彦・工藤達朗)による三段階審査論(①保護範囲、②制約の有無、③制約の正当性)で書くのがセオリーとなっているようです。
その点では、憲法についても、定評ある名著よりも、まずは学習書的な本で学ぶのが良いと思われます。
また、最近の司法試験の憲法は上記の、『憲法Ⅰ』(渡辺康行・宍戸常寿・松本和彦・工藤達朗)による三段階審査論(①保護範囲、②制約の有無、③制約の正当性)で書くのがセオリーとなっているようです。
しかし、従来から根付いてきた芦部信喜先生の違憲審査基準論との兼ね合いがどのようになるのか、憲法判例は「二重の基準論」ではないが、かといって「三段階審査論」でもないのではないか、そして結局、「三段階審査論」は一見すると厳密に審査しているようで、問題解決の力点が③制約の正当化にかかってしまい、司法試験用語でいう「あてはめ重視」の美名のもとに、特に明確な理論を設けない「利益衡量」(往々にして人権制約に傾きがち)を許すことにならないかという疑問が、個人的にはありました(私が三段階審査という手法を深くは理解していないため、表層的な疑問にとどまっている点はご容赦ください)。
木村草太教授の『憲法』は、違憲審査基準論において、芦部説の二重の基準論と、上記三段階審査説を整理して説明しておられるので、その点でもお薦めです。