違法性
違法性
ある行為について犯罪が成立するというためには,構成要件に該当し,違法性があり,責任(有責性)があることを要します。
構成要件に該当するとは,例えば刑法204条の傷害罪における「人の身体を傷害した」に当たる,ということです。
一般的には,「人の身体を傷害した」にあたるのであればそれはすなわち犯罪ではないか,と思われるかもしれません。
しかし,「人の身体を傷害した」場合でも,それが,ボクシングのような格闘技や,サッカーでスライディングタックルをした結果として相手を怪我させてしまったということであれば,それは,ボクシングやサッカーという競技において必然的に生じることですから,傷害罪として逮捕されたり,裁判を受けることはありません。
刑法35条には「法令または正当な業務による行為は,罰しない」とあります。
これは,構成要件に該当する行為(パンチ,タックル等で他人を怪我させる)であっても,法令や業務(これは人権擁護の観点からかなり広く解されており,アマチュアの草野球や草サッカーでも「業務」にあたります)によってそれを行ったのであれば違法性が欠けるので犯罪にあたらない,ということです。
違法性が欠ける場合として,刑法の総則(総論部分)に明記されているのは3つです。
刑法35条 正当行為
刑法36条 正当防衛
刑法37条 緊急避難
このほかに,第4のパターンとして超法規的違法阻却事由があると言われています。要するに条文には掲載されていないが違法性なし(阻却)として良い場合がある,ということです。
また,個別の刑法条文を見ると,ある特定の罪においてだけ違法性阻却事由が認められている場合があります。
有名なものは,刑法230条の2,名誉毀損罪において一定の要件を満たせば「罰しない」とされている規定です。この「罰しない」が違法性阻却事由と言い切れるか否かについては,かなりの論争がありますが,学説上は違法性阻却事由と解するのが多数説のようですので,ここで例に挙げました。