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建築・不動産訴訟

騒音問題

共同住宅における騒音問題について

共同住宅(アパート・マンション)に関する法律相談の中でも多いのが、居住者間の騒音に関する問題です。
隣人、もしくは階上・階下の住人の立てる音がうるさくて眠れないということで騒音差止請求や損害賠償請求の相談をされることもあります。

ただ、実際には、騒音は訴訟等で解決することがかなり難しい問題です。
その主な理由をあげるとすれば以下の通りです。


1 「騒音を出すな」という請求は原則難しい

例えば隣人がうるさいというときに、請求の趣旨に「騒音を出すな」と書いた訴状を持って行っても、おそらく裁判所には受け付けてもらえないでしょう。騒音と言うのが何を指すのか、何デシベル以上の音を騒音とするのか、人によって基準が異なるところがあるため、請求として曖昧だからです。公害(騒音)訴訟などでは何デシベル以上の音を出すなとか、どこどこに防音壁を設置せよという請求の仕方があるかもしれませんが、それはかなり専門的な調査を尽くしたうえでの話であって、共同住宅の騒音問題に応用するのはかなり難しいと思います。受忍限度を越えれば、完全に止めさせるのは難しいとしても損害賠償請求は可能と書かれているサイトもあって、それはたしかにその通りですが、受忍限度の基準はあくまで「社会通念」ですから、一定の音量(デシベル)を越えれば常に損害賠償が認められるわけではありません。例えば、同じ音量でも、交通量の多い幹線道路沿いのアパートと、閑静な住宅街のマンションでは、社会通念上の受忍限度も異なることになるでしょう。


2 音の発生元が特定しづらい

建物の構造によって音の伝播の仕方は異なります。
上の部屋の住人が非常にうるさいと思っていたら、実際にうるさくしていたのは真隣の部屋の住人だったとかというケースは案外あるものです。
例えば、一日に3回、部屋にドーンと言う音が響いたとして、上の部屋の住人かと思っていたら、1回目は上の部屋の住人で当たっていても、2回目は隣の部屋の住人で、3回目は斜め上の部屋の住人だったということも有り得るわけです。
そうなると、よほど恒常的なものを除いては音の発生源はかなり特定しづらいという帰結になります。


3 被害の程度が加害者にはわからない

車をぶつけてしまったとか喧嘩で殴ってしまったとかのことであれば、自分のやったこと(加害)の結果がすぐに把握できるわけですので、誠意には差があるかもしれないにしても、客観的な被害の程度についての認識の差と言うのは基本的にはあまり起こりません。ところが、共同住宅の騒音の場合は、相手の部屋での聞こえ方がお互いわからないものですから、加害者になってしまっている方は無自覚な半面、被害に遭っているほうはどんどん思いつめてしまうということもあります。したがって、いきなり訴訟に持ち込んでも、加害者も「何がそんなに迷惑なんだ」「被害者と言っている人もかなりうるさいだろ」等と反発を憶えることは必至です。


このような理由がありますが、特に大きいのは2.の発生元の特定がしづらいことです。
仮に室内にどかどかと音が響く様子を録音・録画したとしても、それだけではどこの部屋が音の発生源かわからないはずです。
そうなると、騒音が受忍限度を超えているからと言って訴えるにしても被告を特定できないことになりますし、周囲の住人全員を被告にして訴えるわけにも行きません(手当たり次第の訴訟はかえって訴えられる危険もある)。
ここに、共同住宅における騒音問題を訴訟にすることの難しさがあります。


では、騒音問題についてどうするか。
できれば避けた方が良いのは、壁をドンと叩いたりして自分だけで解決しようとすることです。
上記の通り騒音の発生源と言うのは特定できませんし、騒音を発しているほうも自覚がないのがほとんどですから、壁を叩いたりしても、特に身に覚えのない人であれば反発するでしょうし、本当に騒音の発生源であっても意固地にさせるだけになります。
言葉のない、ドーンと言う音はやはり驚かされるものですから、一時的には恐怖心から静かになっても、やがて反発心が巻き起こるきっかけになってしまうでしょう。
かえって報復をしあうかたちになってしまって、余計に問題が悪化しかねません。
騒音問題がきっかけで刑事事件になってしまう騒ぎもありますので、自力で報復しようとするのはやめたほうがいいです。

まず、賃貸アパート・マンションの場合は基本的には管理会社と大家に相談して対処してもらうことになるでしょう。
ただ、なかなか発生源を特定するまでの調査はできないと思いますので、張り紙等で対処するのが一般的かと思います。
張り紙等で警告してもなお騒音がなくならない場合は、他の物件を紹介してもらって引っ越すしかないかもしれません。私自身、まだ駆け出しの頃ですが、上階の住人の足音がひどくて自室に帰るのが嫌になり、別の賃貸マンションに引っ越したことがあります。
ただ、利用規約を遵守させることができていない(騒音発生をやめさせられない)管理会社や大家に問題がある可能性もありますので、決断をする前に、弁護士や建築士に相談するのがいいかと思います。

分譲マンションの場合は、管理組合で協議して対処を決めることになるかと思います。
ある区分所有者が住人の共同の利益に反する行為をする場合、一定の要件を満たせば、その区分所有者に対して使用禁止請求や、その部屋(専有部分)の強制競売請求をすることもできます。
ただ、使用禁止請求や強制競売請求はかなり要件が厳しいので、ちょっとやそっとの騒がしさでは認められないと思います。

いずれにせよ、共同住宅における騒音の問題は、なかなか難しい問題です。
例えば部屋でドラムを叩いたり友達を呼んで夜通し騒ぐというようなことが原因であればまだ突き止めることもできますし、やめさせる方向で交渉することも考えられますが、洗濯機やシャワー、掃除機、子どものどたどた走る足音などの生活騒音は、事例にもよりますがお互い様のところもあるので、どちらか一方だけを悪者にできないところもあります。

ですので、基本的にはすぐに「訴える!」というのではなくて、また自分ですべて解決しようというのでもなくて、賃貸であれ分譲であれ、一種の自治問題として相談や対話をベースに進めざるを得ないところかと思います。ただ、どうしても我慢できない、訴えたいという場合は、訴訟にできる可能性がどこまであるのか判断する必要があるので、弁護士までご相談いただければと思います。



リフォーム工事の問題

リフォーム工事のトラブル

リフォーム工事に関する法的トラブル(主に請負代金額を巡る紛争)について相談を受けることが、施工業者側・施主(消費者)側、ともに増えています。
 
リフォーム工事に関しては原則として新築工事のような建築確認や工事監理者を必須とする制度になっていません。
行政も建築士(工事監理者)も関わらないまま、施工業者と施主(消費者)との間の一対一の関係で話が進んでいくことが多いので、それだけに,言った言わないのトラブルになることも多いという印象です。
 
また、リフォーム工事に関しては建築士等の資格が必要なわけではなく、下請け業者を集めることが出来る伝手があれば何とか業務ができてしまう側面もあり、特に地震の後などに怪しいリフォーム業者が現れては無理な工事を受注して、代金だけは取る(銀行融資が普通だが、クレジット・サラ金すら使わせる事例もあり)、しかし工事は延期の繰り返しあるいは粗末な施工という事件は割と頻繁に見ます。
 
逆に、手順を踏んでまともな施工をしているはずなのに、説明不足のせいで悪徳業者と勘違いされてしまうリフォーム業者の方もいます。
 
 
特にトラブルが多いのは追加工事に関することです。
 
施工業者その他不動産業界の人間から言わせれば、工事を進めていく中で修正工事や追加工事が発生することはよくあることなのでしょう。追加工事が生じる時はいずれかの段階で追加分の増額をまとめた見積を示して交渉で追加代金額を支払ってもらえるはずだという考えがあると思います。しかし、施主側がどう考えているかはわかりません。
 
施主とすれば、当初見積時・契約時は予想していなかった金額の追加工事代金を提示された時に、なぜ増額になるのか、最初の見積もりは何だったのかということになります。
特に最初の段階で、安値の工事代金に魅力を感じてその施工業者に発注していた場合はなおさらトラブルが大きくなるでしょう。
「こんなに高くなるなら発注しなかった」「どうせ高くなるなら、もっと大手の業者に頼んでいた」となることも多いと思われます。
 
こういった事件に対応する時によく思うのは、施工業者側・施主側ともに打合せ記録をしっかりと作成して保管しておいてほしいということです。 
双方押印の打合せ記録を作成することに抵抗があるという場合は、メモ+録音のかたちでも構わないと思います(打合せ内容の録音も、変に用途外に使用しない限り違法でも犯罪でもないことは別の項で述べたとおりです)。
 
もちろんそれが記録化されていないからと言ってトラブルがあった際の受任や訴訟提起を断るほどのことではありませんが、何らかの動かぬ証拠があると難易度が格段に違います。当然、有利な客観的証拠を多く揃えている場合のほうが有利な結果に繋がることが多いのです。
  
 

前田誓也法律事務所
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